腎臓病の治療用特殊食品の特徴とは?活用のメリットや種類、食事療法のポイントを解説 - 健康管理食ジョイント

#腎臓病

2022.03.30

腎臓病の治療用特殊食品の特徴とは?活用のメリットや種類、食事療法のポイントを解説

腎臓病の治療用特殊食品の特徴とは?活用のメリットや種類、食事療法のポイントを解説
馬塲 耕造
監修

馬塲 耕造

治療用特殊食品とは、主に腎臓病の人が食事療法を必要としたときに推奨される特別な食品類のことです。特定の栄養が制限されているので、制限食であっても充実した食事にできます。この記事では、治療用特殊食品の特徴や使い方について解説します。
もくじ

治療用特殊食品とは

治療用特殊食品とは、病気の治療のために成分を特別に調整した健康食品のことです。主に腎臓病の食事療法に用いられることが多く、たんぱく質や塩分など特定の栄養素が大幅にカットされています。

 

治療用特殊食品の特徴

治療用特殊食品は、食事内容に制限のある人用に成分が調整されています。同じ食品を、成分だけ調整しているのが特徴です。代表的な食品は、減塩の調味料やたんぱく質調整ご飯などです。スーパーやドラッグストアなど、どこでも入手できます。治療に用いられることが多いので、健康的な人が進んで食事に取り入れるメリットはほとんどありません。

摂る栄養に制限がある人向けの食品

食事での栄養摂取量が厳しく制限されている人は、治療用特殊食品を使う必要があります。場合によってはダイエットに用いられることもありますが、あくまで主目的は食事療法用に使うことです。たんぱく質、塩分、糖質など、病名や症状によって制限する栄養が違うので、自分に合った治療用特殊食品を選ぶようにしましょう。

簡単に制限食が食べられるのがメリット

毎日の献立作りが、食事療法の一番のネックです。特定の成分だけ避けながら食事を取るのは、簡単ではありません。腎臓病の人は、単に肉・魚・卵などの高たんぱく食品だけを使わなければよいだけではありません。たんぱく質は主食のご飯やパン、しょう油などの調味料やダシにも存在します。

たんぱく質に限った話ではなく、塩分や糖質でも同じです。しかし治療用特殊食品を使えば、簡単に制限しながら食事が取れます。治療用特殊食品は制限したい成分が大幅にカットされているので、ほかのおかずの栄養をあまり気にしなくて済みます。

どんな使い方をするの?

基本的に、普段の食事内容と治療用特殊食品を入れ替える使い方で問題ありません。加熱済み、加工食品、レトルトなど、治療用特殊食品は種類がたくさんあります。温めるだけのものも多いので、簡単に調理できるでしょう。

また、治療用特殊食品は外出先や仕事で時間がないときの非常食という使い方もできます。旅行や出張などでレンジで温めたりそのままでも食べられる種類を携帯しておけば、どこでも安心して食事が取れます。

腎臓病の食事療法で制限する成分

治療用特殊食品が必要になるのは、主に腎臓病で腎機能が低下したときです。腎臓は尿を作る臓器ですが、尿と一緒に余計な栄養や老廃物を排出する役割もあります。腎機能が低下すると、たんぱく質やリン、カリウム、塩分の排出がうまく機能しなくなります。よって、これらの摂取を制限しなければなりません。

たんぱく質

たんぱく質が体内で代謝されると、残った老廃物が腎臓へと運ばれて排出されます。腎臓病の症状で腎機能が低下すると、老廃物が排出されずに体に悪影響を及ぼすのです。腎臓への負担を減らすため、食事療法の多くでは最初にたんぱく質の摂取を制限します。

塩分

塩分の主な役割は、体内の水分バランスを正常に保つことです。腎臓病にかかると、今までなら排出できていた余分な塩分が尿と一緒にうまく排出できなくなります。

病院では腎臓病の治療のために利尿剤を使って排出させますが、塩分を摂取しすぎると効果が弱くなるという特徴を持ちます。腎臓への負担を減らすだけでなく、利尿剤の効果を発揮させるためにも塩分は控えなければなりません。

カリウム

生野菜や肉、海藻など幅広い食材に含まれており、塩分の排出を助ける働きがあります。しかし、摂りすぎると腎臓に負担をかけるため、摂取量を厳しく制限しなければなりません。また、カリウムが尿と一緒に排出されなくなると血中にカリウムが常駐することになり、心臓に悪い影響を与えます。最悪の場合、腎臓病の悪化と共に心不全や不整脈もあり得ます。

リン

神経や筋肉を正常に保つ働きをする成分です。摂取量がオーバーすると血中にリンが常駐することになり、動脈効果や心停止などさまざまな症状を引き起こします。腎臓病にかかると、リンを排出できなくなります。

カロリーは十分摂る必要がある

食事療法の注意点は、カロリーが不足しやすいことです。病気を治すには、体力の元となるカロリーが必要になります。食事療法ではたんぱく質や塩分を制限しながら、必要なカロリー量も満たさないといけません。

腎臓病がひどくなるとどうなる?

腎機能の低下は、ほかの病気を併発させる原因になります。そもそも人間の体内がいつも健康でキレイなのは、腎臓が毒素や老廃物を排出してクリーンな状態に保っているおかげです。腎臓が悪くなると、老廃物や毒素、過剰に摂取した栄養がそのまま体内に残り続けます。機械で血液をクリーンにする人工透析が必要な場合もあり、動脈硬化や心不全、心停止など重大な疾患を引き起こします。

治療用特殊食品の種類

腎臓病をこれ以上悪くしないためには、しっかりとした食事療法が必要です。自分で全ての料理を賄うのは大変なので、治療用特殊食品をうまく活用しましょう。

たんぱく質調整用食品

食品に含まれるたんぱく質量を、大幅にカットした治療用特殊食品です。主にご飯やパン、麺などの主食系食品のものが多く、おかずや調味料、お菓子になっているタイプもあります。主食のたんぱく質をカットすればおかずの選択肢に余裕ができるので、献立も簡単に立てられるのがメリットです。

食塩調整用食品

市販の減塩調味料よりも、さらに塩分量を減らした治療用特殊食品です。塩分はほとんどの食品に含まれる成分なので、通常の食事では避けるのが難しいです。腎臓病の人が摂取してよい塩分量は1日に約6gとかなり厳しい量なので、治療用特殊食品をうまく活用しましょう。塩分は主に加工品や調味料に多く含まれているため、減塩調味料や減塩食品を入れ替えるだけでもかなり減らせます。

リン調整用食品

リンを調整した食品は、低リン食品とも呼びます。主に調味料や飲料になっており、料理を作る際にとても便利です。高リン血症という、血中のリン量が多いときにも用いられます。代表的な食品では、牛乳のリン量を調整した低リン牛乳が挙げられます。

エネルギー調整用食品

エネルギーとして吸収しやすい、糖質や脂質を主成分としているものです。少量でもエネルギーをたくさん摂れるため、もともと食が細い人にもおすすめです。

毎日の食事に治療用特殊食品を取り入れる方法

食事療法では、バランスのよい食事を大切にしないといけません。制限する栄養はありますが、あまりに極端になりすぎても体を壊します。全てを治療用特殊食品にするわけにもいかないため、上手に取り入れる必要があります。

主食は低たんぱく食品に置き換える

低たんぱくご飯やパンなどのたんぱく質調整食品は、そのまま主食と入れ替える使い方で問題ありません。食事療法でたんぱく質の摂取制限が必要になると、主食のせいでおかずまで制限されてしまいます。そこで主食を低たんぱく食品と交換すればおかずの品目数も増やせて、栄養バランスを整えられるでしょう。

副菜類は塩分・リン・カリウムを調整した食品に置き換える

副菜で気をつけたい栄養素が、塩分やリン、カリウムなどのミネラル類です。お浸しや軽いサラダは野菜を使った濃いめの味付けをしたものが多く、これらの栄養素をたくさん含んでいます。食塩を減らしたドレッシングやめんつゆを使い、塩分の摂取量を調整しましょう。リンやカリウムは、たんぱく質の少ない食品をチョイスすれば自然と摂取量を減らせます。

カロリー量が足りないときはエネルギー補給食品を追加しよう

食欲がないときや制限食でカロリー量が満たせないときは、エネルギー補給食品を食前か食後に取り入れるのがおすすめです。少ない量でたくさんのエネルギーがあるので、手軽にカロリーを補給できます。食欲がない人は、パウチゼリータイプや飲料タイプの摂取しやすいものを選びましょう。

食事療法のコツ

食事療法は質素な食事をイメージしがちですが、実は全くそんなことはありません。治療用特殊食品を使ったり献立を工夫したりすれば、制限がある人でも充実した食事ができます。

食事の重量と栄養量を記録する

まずは普段の食事を記録して、栄養バランスやカロリー量を把握しましょう。自分で思っていた栄養と実際に計算した量とでは、ズレが生じます。食事療法では、栄養バランスを整えて制限量を守るのが最優先です。正確な数値ではなくざっくりとした計算でも記録を残せば、献立作りに役立ちます。

献立を工夫する

料理のバリエーションが増えると、制限食でも飽きずに楽しんで食事ができます。治療用特殊食品はすでに出来上がったものが多いので、それ以外の料理で一工夫を加えてみるのはいかがでしょうか。自炊が苦手な人は、健康重視の宅配食を頼むのもおすすめです。

 

治療用特殊食品を使って腎臓に優しい食事を取ろう!

腎臓病にかかって食事療法が必要になると、今まで食べていたものが食べられなくなり心が沈んでしまいます。しかし、食事治療でも工夫すれば充実した食事ができます。治療用特殊食品は腎臓病の人でもおいしい食事が取れる便利な食品なので、ぜひ利用してみてください。

また、ジョイントでは、腎臓病向けのお食事も揃えております。一度お試し下さい。

馬塲 耕造
監修株式会社ジョイント
監修馬塲 耕造

管理栄養士馬塲 耕造

1950年生まれ。国立循環器病研究センター 栄養管理室長、大阪刀根山医療センター 栄養管理室長、関西福祉科学大学 福祉栄養学科 客員教授。現在、優れた知見をもとに当社商品の監修と管理栄養士の指導を行い、お客様の栄養相談も行っている。