低たんぱく米を使うメリットとは?自分の生活に合わせて治療用特殊食品を活用しよう - 健康管理食ジョイント

食事療法

2022.03.30

低たんぱく米を使うメリットとは?自分の生活に合わせて治療用特殊食品を活用しよう

低たんぱく米を使うメリットとは?自分の生活に合わせて治療用特殊食品を活用しよう
馬塲 耕造
監修

馬塲 耕造

腎臓病では低たんぱく質の食事が必要となる場合があります。その場合に役立つのが低たんぱく米です。低たんぱく米を使うとどんなメリットがあるのでしょうか。この記事では、低たんぱく米の特徴や腎臓病の食事療法に役立つ理由、使い始めるタイミングについて解説します。
もくじ

低たんぱく米とは

低たんぱく米は、腎臓病の人向けの低たんぱく質のご飯です。うるち米を原料とし、酵素や乳酸菌の働きでたんぱく質を分解して作られています。米やパックご飯など、さまざまな商品が販売されています。

ここでは、低たんぱく米の栄養価の特徴について説明します。

低たんぱく米の栄養価

低たんぱく米は、その名の通り低たんぱく質です。また、腎臓病で制限が必要になるカリウムやリンも普通のご飯より少なくなっています。

低たんぱく米の主な栄養素は炭水化物(糖質)であり、普通のご飯と同程度かやや多く含んでいます。

商品によってたんぱく質量はさまざま

低たんぱく米に含まれるたんぱく質の含量は通常の5分の1、25分の1、35分の1と商品によってさまざまです。低たんぱく米のたんぱく質量を、普通のご飯と比較してみましょう。

ご飯1食(180g)あたりのたんぱく質

(g)

3食分あたりのたんぱく質

(g)

普通のご飯 4.5 13.5
低たんぱく米(5分の1) 0.9 2.7
低たんぱく米(25分の1) 0.2 0.6
低たんぱく米(35分の1) 0.13 0.39

出典:文部科学省 食品成分データベース 穀類/こめ/[水稲めし]/精白米/うるち米

普通のご飯には、茶碗1杯(180g)あたり4.5gのたんぱく質が含まれています。1日3杯食べると、ご飯だけでたんぱく質を13.5g摂取することになってしまいます。3食のご飯を低たんぱく米に置き換えると、1日10g以上のたんぱく質を削減できるのです。 1日のたんぱく質の摂取量を考慮して選びましょう。

低たんぱく米のカロリー

普通のご飯と低たんぱく米でカロリーを比較すると、ほぼ変わらないか少し上回る程度です。 普通のご飯と同じ量の低たんぱく米に置き換えることで、低たんぱく質に抑えながらも必要なカロリーがとれます。

「特別用途食品」の表示を確認しよう

腎臓病の人に向けた低たんぱく質食品の中には、消費者庁によって「特別用途食品」として許可されたものがあります。パッケージにマークがついているので、他の食品と見分けられるようになっています。

特別用途食品は栄養価について以下の条件を満たしているため、たんぱく質制限が必要な腎臓病の人の食事に役立つでしょう。パッケージのマークを確認して選んでください。

  • たんぱく質:通常の同種の食品の30%以下
  • カロリー:通常の同種の食品と同程度かそれ以上
  • ナトリウム・カリウム含量:通常の同種の食品より多くない

※「特別用途食品」低たんぱく質食品の規格(抜粋)

出典:消費者庁「特別用途食品の表示許可基準

低たんぱく米を使うメリット

腎臓病の人がたんぱく質の摂取制限を行うときに、低たんぱく米を使うメリットは大きく分けて2つあります。この2つのメリットについて、腎臓病に必要な食事制限とその理由をあわせて解説します。

主食のたんぱく質を減らせる

たんぱく質制限が厳しい場合、普通のご飯を食べていると1日の上限の半分弱をご飯でとることになります。ご飯を低たんぱく米に変えて、その分のたんぱく質を肉や魚などからとることで、食事の満足感が上がります。

たんぱく質の摂取を制限する理由

たんぱく質が代謝されると、尿素などの毒素が産生されます。腎臓はそれらの毒素を尿とともに体外へ排泄する働きがあるため、たんぱく質の多い食事は腎臓に負荷がかかるのです。腎機能が低下した腎臓病の人は、腎臓を保護するためにたんぱく質の摂取制限が必要になります。

腎臓病で摂取していいたんぱく質量

1日に摂取できるたんぱく質の量は、腎臓病の進行ステージによって異なります。初期ではとりすぎを避け、標準体重1kgあたり1.3g未満が目安とされています。最も進行したステージの基準は標準体重1kgあたり0.6~0.8gで、初期の半分程度まで制限が必要です。160cmの人ではたんぱく質33~44gに相当します。活動量や合併している病気によっても異なるため、摂取制限は主治医の指示に従いましょう。

出典:日本腎臓学会「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版

アミノ酸スコアが高い食品をとる

腎臓病では限られた摂取量の中で、良質なたんぱく質をできるだけ多くとることが大切です。たんぱく質の質を表す指標として、食品からとるべき必須アミノ酸の含量を示した数値を「アミノ酸スコア」といいます。肉や魚、卵、牛乳などの動物性食品は高く、米や小麦などの穀類は低いことが知られています。

米を低たんぱく米に置き換え、減らした分のたんぱく質をアミノ酸スコアの高い動物性食品からとることで、良質なたんぱく質の割合を増やせるのです。

必要なカロリーを確保できる

腎臓病はたんぱく質を制限しながらも、十分なカロリーを確保する必要があります。たんぱく質を制限すると一般的にはカロリーも減ってしまうため、必要な量がとれない恐れがあるのです。低たんぱく質である糖質中心の食品や、油を上手に使って補いましょう。低たんぱく米もカロリー確保のために活用できます。

腎臓病でカロリーを確保する理由

カロリーが不足すると筋肉などの体たんぱく質からカロリーを取り出すため、体たんぱく質が代謝されます。その結果、体重が減り、疲れやすくなるのです。さらに、たんぱく質が代謝されることで毒素が産生され、それを排泄するために腎臓に負荷がかかります。筋肉の分解を防ぎ腎臓への負荷を減らすため、カロリーを十分に確保する必要があるでしょう。

腎臓病でとるべきカロリー量

腎臓病でとる必要があるカロリーは、標準体重1kgあたり25~35kcalとされています。これは160cmの人だと約1400~1950kcalに相当するのです。たんぱく質の制限量と同様に、活動量や合併する病気によってもカロリーの必要量は異なります。主治医の指示に従うようにしましょう。

出典:日本腎臓学会 「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版

低たんぱく米を使うタイミング

低たんぱく質の食品を取り入れることは、すべての腎臓病の人に必須ではありません。病気の進行具合によってたんぱく質制限の量は異なるため、病状に合わせて選択する必要があります。ここでは、低たんぱく米を使い始めるタイミングについて説明します。

たんぱく質制限を指示されたとき

たんぱく質制限について主治医から指示されたら、低たんぱく米を使うことを検討するタイミングです。普通のご飯ではたんぱく質を指示された量まで制限できない場合は、低たんぱく米を食べるようにしましょう。低たんぱく米が必要かどうかわからない場合は、医師や管理栄養士に相談することをおすすめします。

腎臓病=たんぱく質制限ではない

腎臓病であっても、初期の場合はたんぱく質を制限する必要はなく、過度の摂取に気をつける程度で問題ありません。制限の指示が出ていない人が低たんぱく質の食事をとるとカロリー不足に陥りやすくなってしまい、かえって腎臓に負荷をかける可能性があります。たんぱく質を制限すべきかどうかを主治医に確認し、必要に応じて低たんぱく食品を使用しましょう。

 

自分の状態に合わせて低たんぱく米を活用しよう!

低たんぱく米は、低たんぱく質の食事が必要な腎臓病の人でも安心して食べられる食品です。たんぱく質を抑えるだけでなく、普通のご飯と同程度のカロリーを摂取することで、腎臓への負担を減らせます。ただし、腎臓病の初期は過度の摂取を控える程度の制限であるため、低たんぱく米を使用しなくてよい場合もあります。病気の状態に合わせて、低たんぱく米を活用しましょう。

また、ジョイントでは、たんぱく調整食の商品ご用意しております。管理栄養士も在籍しておりますので、この機会に一度、ご相談下さい。

馬塲 耕造
監修株式会社ジョイント
監修馬塲 耕造

管理栄養士馬塲 耕造

1950年生まれ。国立循環器病研究センター 栄養管理室長、大阪刀根山医療センター 栄養管理室長、関西福祉科学大学 福祉栄養学科 客員教授。現在、優れた知見をもとに当社商品の監修と管理栄養士の指導を行い、お客様の栄養相談も行っている。